観音院の参道に寄り添うように建つこの町家は大正9年(1920年・築91年)に建てられた。この地域は、工事申請時においては、こまちなみ保存区域であったが、現在は卯辰山山麓伝統的建造物群保存地区に指定されている。
既存建物は、崖下側(南東側)および南側に傾斜しており、床組みの傾斜も著しく、1階床下を覗くと束が束石から浮いている状態であった。傾きを放置すると傾斜が進み危険な状態であり、全体柱の沈下・建て入れ修正に加え、基礎の築造、架構の補強、耐震壁等を配置し、構造補強をおこなっている。1階・地階はコンパクトながら住まいとして、使い勝手の改善・間取りの変更をしている。2階は茶室、多目的なスペース(週末カフェ)として、出来る限り当初の趣きを残して修繕している。また、敷地周辺の自生の植物を中心に植栽し、観音院の参道からの景色を損なわぬよう外構を整えている。

【改修前】

体験談~住まい手の声~
築90年の町家の修繕を経験した自分にとって、町家再生の意味は何だったのかを、今振り返ってみると、伝統的な住宅の佇まいを後世に残すという意義を達成できたこと以上に、周囲の環境と調和しつつそこでどう暮らしていくのかを自問自答し、自分なりに答えを見つけ、それを実践して行くことを決めた私的な試行錯誤の過程を経験できたことが重要に思えてくる。つまり、設計や施工に携わって頂いた皆さんが、未来を具体化することに迷う自分を見守り、決断を支え、現実の姿に導いてくれたのである。金銭に換え難い貴重な体験であった。(黒崎敏男さん)

週末のみ、自宅の一部にてカフェをされております。
浅野川周辺を一望できる町家にて、美味しい珈琲とともにゆっくりとした時間をお過ごしください。
営業日等は観音坂「いちえ」ホームページをご覧ください。